--グラフィックデザインに興味をもったきっかけを教えて下さい。
MOGOLLONとして活動を始めた頃は、グラフィックデザインをやることになるとは思いもよりませんでした。スタジオを作りたいと思った大きな理由は、ずばり、映画です。映画やパフォーマンスのアート・ディレクションや舞台美術に携わりたかったんです。それと、僕たちはずっとポスターのコンセプト作りや、音楽のパッケージ作りが大好きで、手がけてみたいと思っていたんです。実際にやってみたら、あっという間に恋に落ちた感じでした。
-- MOGOLLON設立までの経緯を教えて下さい。
なにもかも自然な成り行きでした。当時、PS1とMOMAが共催する若手建築家向けのプログラムのビデオ制作を委託されていた僕(フランシスコ・ロペス)が、モニカ(・ブランド)に手伝いを頼んだんです。最終的に、ビデオの出来はすごくよくて、僕たちはその結果にとてもハッピーでした。それで、もっといろんなことができるようなアート・スタジオを、力を合わせて一緒に作ろうということになったんです。それはまさに実験でした。
--お二人の役割を教えて下さい。
モニカと僕は、スタジオで、同じ役割をになっています。二人とも、僕たちのプロジェクトのクリエイティブ・ディレクターであり、デザイナーでもあるんです。
--バンドやレーベル、セットデザインや映像作品、企業のアイデンティティなど多数手掛けていますが、そうしたトータルでデザインを手掛ける仕事と、ビジュアルの一端を手掛ける仕事とで、アプローチや手法は異なりますか?
ものすごく正直な話、それは、毎回全然異なります。時によって、ビジュアルだけを手がけることが、楽しかったり、ストレスだったりします。すべてはクライアントのリアクションや、彼らが自ら欲していることを理解しているかによります。
--FischerspoonerやKelis、Madonnaなど、数々の大物アーティストとコラボレーションされていますが、実際一緒に制作していかがでしたか?
大物アーティストたちとの仕事というのは、大抵の場合、ごくささやかなコラボレーションです。というのも、直接向き合うのはレーベルですから。通常、レーベルとアーティストの両方と一緒に一度ミーティングをして、そこでアイデアやコンセプトを共有します。その後、最終的な強い絵柄に辿りつくまで、果てしない「ああでもない、こうでもない」を繰り返すのです。
--デビッド・ラシャペル(Fischerspooner) 、ランキン(Kelis)、クリスチャン・ジョイ(SOMETHING IS ABOUT TO HAPPEN)などのスタイリストやフォトグラファーは誰が決めているのでしょうか?
大物アーティストたちの場合、フォトグラファーは、レーベルかアーティスト自身が選定します。「SOMETHING IS ABOUT TO HAPPEN」は、自分たち自身のプロジェクトでしたから、チーム全体を自分たちで選びました。
--他分野のクリエイターと一緒に作品を制作することは、自分たちのクリエイションに何をもたらしますか?
僕たち自身のクリエイションに影響することはないです。それは全然別のプロセスなので。ただ、それは常に興味深く、素晴らしい結果をもたらすものです。他のアーティストとコラボレーションすることは、大好きです。
--これまで手掛けた作品の中で、最も気に入っている作品を教えて下さい。
「SOMETHING IS ABOUT TO HAPPEN」展のために作ったビデオ、壁紙、鏡(ミラーアクリル)です。
--インスピレーションの源はどこから?
本や旅、映画からインスピレーションを得ます。たとえば、今、僕たちにとって、インスピレーションの源の最たるものは、古代エジプトと日本のアートです。映画も僕らに大きなインスピレーションをもたらします。例えばライナー・ヴェルナー・ファスビンダーやピエル・パオロ・パゾリーニやフェリーニの作品などです。
--MOGOLLONにとって、タイポグラフィーの魅力とはなんですか?
タイポグラフィーは、古くからある、一定の評価を得ているアート・フォームであ り、今でも無限の様式を探ることが可能です。選択肢に限りがない、というのが非常 に面白いところだと思います。
--オリジナル・フォントの制作過程はどのようなものですか?また重視しているポイントなどあれば教えて下さい。
状況次第ですね。文字を(絵のように)描くときもあるし、ベーシックな幾何学模様からタイポを作りたいと思うときもあるし、(あるタイポに)新しい要素を加えて別のタイポに変換させてしまうことも、そして、違った形同士を、文字になるまで合成することもあります。僕たちにとっては、まさにゲームのようなものなんです。
--オリジナル・フォント以外で最も良く使うお気に入りのフォントを教えて下さい。
いつも違います。決まったものはありません。
--今のニューヨークやグラフィックデザインのカルチャーについてどう思いますか?
ニューヨークには、世界中からの人が集まっています。ストリート・アーバン・カルチャーという以外の言い方で、ニューヨーク特定のデザインカルチャーを定義するのは困難です。なぜなら、絶えず面白いことが起きていて、どこにでも存在するものだからです。ポスターや、グラフィティ・アートのように。
--好きなアーティストやイラストレーターはいますか?
石岡瑛子、ジャン=ポール・グード、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ルクレチア・マーテル、バンクス・ビオレッテ、セルジュ・ルタンス、ネオ・ラオホ、田名網敬一、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ルイ・マル、フランソワ・トリュフォー、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー、ギイ・ブルダン、カラヴァッジオ、グスタフ・クリムト、ゲイリー・ヒューム などなど。
--SOMETHING IS ABOUT TO HAPPENの展覧会を通じて新たな発見はありましたか?
もちろん、日本です。すごく気に入りました!
--SOMETHING IS ABOUT TO HAPPENの作品制作にまつわる苦労話はありますか?
鏡(ミラーアクリル)の新作を、こうして初お目見えさせることができたことを素晴らしいと思っています。サイズも大きいし、コストもかかったけれど、十分それに見合うものでした。現在、「反射系」作品だけの展覧会というのを考えています。光と反射の展示です。
--初来日となる日本の印象はいかがでしたか? お気に入りのスポットなど教えて下さい。
僕たちは、10代のころから、アニメ、映画、アートを通じて、ずっと日本に恋していました。日本での滞在は、僕たちの期待を完全に超えたものでした。この国のあらゆる側面が好きですし、最も伝統的な古代の絵画から、スーパーモダンなイメージにいたるまで、(自分たちとの)視覚的なつながりを強く感じました。でも、僕たちの日本に対する最高の印象は、人です。他の場所ではあり得ない優しさや思いやりを感じました。
--今後のプロジェクトについて教えて下さい。
たとえば鏡のような、3次元の作品をさらに作っているところです。それは、家具の実験とも言うべきものです。それと、2年以上、映画の脚本に取り組んでいるのですが、これは僕たちの将来に、確実に何かをもたらすと思います。
--これから作品を鑑賞する人々にメッセージをお願いします。
日本という国で、僕たちの美の世界観を共有できたらと思います。 ぜひ、展覧会を楽しんでください。